しみろぐ

どうも、しみずです。

創業前、そしてSPODIAとしての約6年間の軌跡

お久しぶりです。本日会社としてGameWith社との資本提携を発表しました。

株式会社GameWithとの資本業務提携に基本合意 既存株主への第三者割当増資実施に関するお知らせ - 株式会社SPODIAのプレスリリース

 創業してから約6年間、幸か不幸か、なかなかに色んなことを経験してきました。

良い機会なので今日はそれらを振り返ってみようかと思います。

 

TVプロデューサーとの出会い

 

『おう、清水〜。USTREAMのスタジオ作るんだ、お前やるか?』

今の僕があるのはおそらくこの電話がキッカケと言ってもいいくらい鮮明に覚えています。六本木ヒルズの横にある、喫煙所前の階段を歩いているときに受け取った電話でした。

 

電話を掛けてきたのはTVプロデューサーのおっちゃんです。

当時21歳だった僕は大学生で、映像を作るのが好きで、テレビ業界を目指していました。

と同時にいわゆる"意識高い系(笑)"の大学生で、色んなイベントを企画しては社会に片足突っ込みたい種族の脳みそを持ち、大学生にしてはいろんな方と接点を持っていました。

 

そのおっちゃんも、映像つくるの好きなら会っておいたほうがいいと、以前に知り合いに紹介してもらった人でした。

のちに知りましたが「イエス高須クリニック!」というキャッチコピーを考えた人でした。ドバイの意味わからんCMや、最近のピコ太郎が出てたあのCMまで、いまでも高須クリニックのCMは彼が作っているそうです。

 

そんな人から活きの良い学生ということで、新しくUSTREAMのスタジオを作るという電話をもらったのです。テレビ業界を目指していた僕にはとても魅力的な環境で、二つ返事で「やります!」と答えたのです。

 

当時のUSTREAMは生放送媒体としてなかなかに勢いのあるものだったので、のちに創業メンバーとなる幼馴染の友達を誘い、二人でインターンとして参画しました。

そうして始まったテレビ業界への第一歩ですが、すぐに気づきました。おっちゃんの「お前やるか?」という一言は、「業界の勉強できるぞ」ではなく、言葉通り「お前がやれ」ということだったのですw

 

なにも経験のない若造2人に、スタジオの立ち上げ実務を全部やれというのは今考えても常軌を逸しています。頭がおかしい人です。

今はもうありませんが、原宿の一等地にできたスタジオ、最新の機材が揃っており、なんでもあるけどなにもない。おっちゃんプロデューサーとディレクター、営業の人、そして僕ら。とんでもないところに来てしまった感が否めませんでした。でもすごくワクワクしていて、なんでもやらせてもらえる環境でした。

 

「来月こんな番組やる提案したから、あとはよろしく!」

毎回そんなスタイルのプロデューサーでした。

 

僕らはスタジオの機材の型番を調べるところから始まり、カメラの使い方、キャスティング、取材の方法、人が足りなければ各大学の放送研究会に連絡してインターンを増やす.... 番組制作に必要なお金以外のほぼ全ての業務を、時にはスタジオで寝泊まりしながらこなしました。

放送当日は一応プロデューサーとディレクターが仕切ってくれますが、小慣れてくるとそれすらも僕らに任せるようになっていきました。

 

「自分の頭で考えて解決策を探す」という社会に出てから一番重要で、一番基本的なことを体で覚えさせてくれたことを今となっては心から感謝しています。この経験が起業をしてから現在まで、本当に役に立ちました。

 

そんな毎日を送っていて、週7日スタジオに通うのが当たり前の日々が続き、気づいたら大学を2回も留年してしまっていました。卒業するまで2年余計にかかるのに、大学の友達はもう就職先が決まっているのです。

 

「将来どうしようか、やばいなあ。でもこのままテレビ業界へ就職すればいいか」

と考える反面、当時League of Legendsにドハマりしていた僕は

「海外ではesportsという産業があるのか、おもしろそうだ。そういう業界もいいかもしれない」と思いました。

 

日本国内でesportsを専門としている会社を調べてみましたが、ほとんどありませんでした。

 

いつものように、スタジオから帰る山手線で吊革につかまりながら、

「もしかしたらプロゲーマーという職業が日本でも生まれるかもしれない。失敗したらまたテレビ業界に戻ってくればいいや。新しいことやってみよう。」

そう決心して会社をつくることを決めました。

 

そのことを一緒に働いていた幼馴染に話したら「俺もやるよ!」となり、プロデューサーに話すと「挑戦できるのは若いうちだけだからな」と送り出してくれました。

 

投資家との出会い 


そしてそのスタジオを離れ、会社をつくる前にもう一人誘いました。 当時ずっと一緒にLoLをプレイしていた中学からの同級生です。

僕と幼馴染、中学からの同級生の3人でお金を出し合い、資本金100万円で会社をスタートすることにしました。2012年11月20日の出来事です。

 

余談ですが、SPODIAというのは"esports"と"media"を掛け合わせた造語から来ています。esportsを世の中に広める媒体(広義でのメディア)になりたいという想いからそう名付けました。

 

会社を作ったはいいものの、社会人経験がない学生の3人が集まったので、大切なことを忘れていました。

 

「100万円では数ヶ月しか持たず、なにも生み出せず倒産してしまう」

 

100万円は大金です。しかしビジネスをする上ではとても少ない金額ということを初めに学びました。

会社をつくって初めての仕事が会社を存続させることというなんともエキサイティングなスタートを切ることになりました。

 

融資はしたくなかったし、貸してくれる銀行もないので投資家を探すことになりました。

いろいろネットで調べていると、僕らのような創業初期(シードラウンド)を対象として投資をしているサムライインキュベートという投資ファンドの存在を知りました。

 

お問い合わせフォームからメッセージを送り、担当の方に事業内容を説明すると、

「おもしろそうですね、今度代表の榊原に会ってみてください」

と言われ後日会うことになりました。

 

むちゃくちゃ緊張しました。なんども資料を読み返し、プレゼンの練習をして、榊原さんに会う日を迎えました。

資料を渡し、表紙をめくり、2ページ目に書いてあった「僕たちはプロゲーマーという職業を生み出す会社です。」と読み上げている途中で榊原さんが口を開きました。

 

「いいね、投資するよ。来週の月曜日には振り込みます。」

「えっ!?」

 

なぜあれほどまでに即答で投資を決断したのか今でもわかりません。のちに何回か聞きましたが「プロゲーマーおもしろそうやん」としか教えてもらえませんでした。

業界の新規性、僕らの若さ、勢いなどを直感で感じ取ったんだと思います。

 

そうして本当に次の週には数百万円が振り込まれ、しばらくは資金の心配をせずに活動をすることができるようになりました。

 

野球をするには球場が必要で、サッカーをするにはスタジアムが必要。だからesportsにも競技をする場所が必要なはずだ、ということで僕らはGAMERS LEAGUEというゲーム大会を企画することになります。

 

そんな中、創業してから数ヶ月経つと、USTREAM時代を共に過ごした幼馴染がやめると言い出しました。彼はエンジニアとして技術的な面を見ていたのですが、「今の自分は戦力にならず、自分の人件費は資金繰りを悪化させるだけ。就職して外の世界をみたい。」といった内容でした。

 

3人で話しあいましたが、彼を引き止めることはせず、円満に別れることになり、創業から数ヶ月後には中学からの同級生と僕の二人の会社となりました。

彼は今、Yahooで1人前のエンジニアとして活躍しています。嬉しい限りです。

 

GAMERS LEAGUEで一番最初にお客さんとなってくれたのはNHN Japanのスペシャルフォースというゲームでした。何も実績のない連中にオンライン大会を開かせてくれて、公式にゲーム内アイテムなどをサポートしてくださったことは、とても感謝しています。

その後その実績を見ていてくださったアラリオのクロスファイアというゲームからもオンライン大会を開催して欲しいというお話をいただき、オンライン大会を何度も開催していきました。

 

大失敗

 

深夜に散歩しながら僕らは今後の事業について話していました。

「オンラインだけではだめだ。オフライン大会をやってもっとインパクトを与えよう。誰も見たことのない、いままでのゲーム大会とは一線を画するオフライン大会を開こう。」

 

僕らはオフライン会場にナイトクラブを選びました。六本木にあるA-Lifeというクラブです。

オンライン予選を開催し、北は北海道、南は鹿児島まで、全国から選手を集めました。

 

そして迎えたオフライン大会当日、事件は起きました。

大人の事情により具体的なことは記せませんが、ネット回線の手配をしていたはずだったものが、されていなかったのです。

社運を掛けた、一大イベントを大失敗させました。

 

後にも先にも、esportsのオフライン大会で、ネットが繋がらないという不祥事を起こしたのは僕らだけでしょう。

あのときの関係者に対して、いまでも本当に申し訳なく思っています。

 

完全に終わりました。大学生がテスト前に発する「やべぇ~、まじやべぇ〜、単位落とすわ〜」とは比べ物にならないやばい失敗を起こしました。

業界内での信用は0になり、なにもすることができなくなりました。

 

とりあえず会社を存続させるために会社の資金を稼ぐ必要がありました。

もう一人と僕で、別の会社に常駐しながらWeb制作の仕事もすることにしました。

 

3ヶ月ほど経ったところで、僕らは喧嘩をしました。

「0からでも良い。もう一回SPODIAとして再スタートを切ろう」という僕の意見に対して

「俺らは社会人としての経験が足りなさすぎる。Web制作の仕事をしながらSPODIAとしての資金をためてからでもおそくない」とぶつかり

「資金がないなら投資家を探せばいい、esportsに全ての時間を捧げなきゃダメなんだ、他の仕事をしている余裕はない」とぶつかり返す

そんな喧嘩でした。

 

今でも思い出しますが、常駐先でお世話になっていた会社の会議スペースで、朝の10時から深夜0時までほとんど休憩もなく、SPODIAとしての今後をぶっ通しで議論しました。

しかし、二人の意見が一致することはなく、結果的に僕1人でSPODIAを再スタートさせることになりました。

 

再起への道のり

 

完全に信用を失った会社を立て直そうと1人で奮闘している間に1年が経過しようとしていました。具体的な方針が見えず、結構な鬱状態になっていました。

そこへ1本の電話が鳴りました。

 

「清水くん、ベイングローリーって知ってる?」

 

大失敗したオフラインイベントにも来てくださったとあるゲームメディアの編集長からの電話でした。

 

「日本展開にあたってのお話が来ているんだけれど、イベントとか提案できないかな?」

 

ベイングローリーに関してあまりよく知らなかったので電話をしながら少し調べてみて、一度電話を切り実際にアメリカのAppStoreからゲームをダウンロードして遊んで見ました。

 

「これだ!」と確信しました。現在の事業領域をスマートフォンのesportsタイトルに絞っているルーツとなる電話でした。

 

こんなにもハイクオリティなゲームがスマートフォンで遊べる。

真のesports体験を、PCなしで体験できる。衝撃を受けました。

 

それからすぐに引き合わせていただき、その後日本のローンチイベントからVainglory8に至るまで、多くのお仕事をいただけるようになりました。

当時の編集長、実績のないSPODIAに仕事を任せてくれたSEMC社には大変感謝しています。

 

創業時からお世話になっていた投資家の榊原さんのもとへある日、定例のミーティングをしに行くと、紹介したい人がいると言われました。

 

インキュベイトファンドの村田さんでした。おそらくスタートアップ経営者で、彼を知らない人はいないでしょう。GameWithの創業メンバー兼投資家であり、それ以前にも数々の企業をEXITさせてきた敏腕投資家です。

 

先日フォーブス誌が選ぶ「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家 BEST10」で1位になったほど、特にゲーム業界での投資手腕は折り紙付きです。

日本で最も影響力のあるベンチャー投資家 BEST10 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 

「やっと会えましたね」

 

初めてお会いしたときの挨拶をした際に、そう言われたのです。僕もずっと会いたかった存在でした。

でも大失敗をしてから立ち直るまで、榊原さんに会わせてもらえませんでした。いま思い返すと一種の試練だったのかもしれません。

 

創業から今までのことを話し、今後の事業計画を一緒に練っていく中で、SPODIAに投資をしてくださることになりました。

 

そして現在まで

 

0から再スタートし、資金もさらに獲得し、ベイングローリーと共に歩んでいく中で、1人では抱えきれない仕事がでてくるようにもなりました。

大学時代に映像制作などで、他大学ではありながらも色々とお世話になった先輩のもとを訪ねました。

 

現在SPODIAの取締役としてバリバリと営業をしてくれている金山との再開でした。

彼は学生のころからイベント業界で仕事をしていて、もう2度と失敗出来ない僕にとってesportsのイベントを企画する際にかなり助けになってくれる存在でした。

 

彼は彼でイベント系の会社を自分で経営する傍ら、ぼくは彼のオフィスを間借りさせてもらい、イベントの仕事があれば一部を彼に発注し、別々の会社でありながらも一緒に働く機会が増えていきました。

 

SPODIAが受けたイベントが、ある時期を境に失敗せず円滑に回り出すようになったのは間違いなく彼のおかげです。

それから少しずつ実績を積み重ね、幕張メッセ級のイベント制作をご依頼いただけるようになったのも、彼のおかげです。

 

今では完全にSPODIAの成長のエンジンとなっています。僕はなにもしていません。

Youtubeを見ながら企画書を叩き、かつご飯も食べながら電話もするという、僕が生きてきた中でも最も頭の回転が早い人間の1人です。意味がわかりません。

 

彼のおかげもあって、その後様々なスマホゲーム会社さんとお付き合いをさせていただく機会に恵まれました。あの時スマホに振り切って良かったと感じると同時に、これからのスマホでのesports市場にはますます可能性を感じていくことになりました。

 

気づけば社内のメンバーはアルバイト含め4人となり、SPODIAに投資してくださる投資家も増えていました。

 

そして昨年末から今年の初めにかけて、インキュベイトファンドの村田さんに「このままだと事業がスケールしない。イベント制作会社で終わってしまう。もっと事業を伸ばしたい。」と現在抱えている好調な点と悩んでいる点を相談しにいきました。

 

「今のSPODIAがGameWithと組んだらおもしろそうですね」

 

そう言うと、その場でGameWithの今泉社長にFacebookチャットを飛ばしてもらい、会う機会を設けていただくことになりました。

 

GameWithはゲーム攻略サイトとして非常に大きなトラフィックを持っています。

それを活用して僕らが培ってきたイベント制作ノウハウや配信ノウハウを融合させればお互いにもっと事業を伸ばしていける。

大変ありがたいことに一緒に事業をつくっていけることになり、冒頭のプレスリリースにいたります。

 

創業前から数えると約7年間、本当にいろんな人に助けられて生きてきた起業家生活でした。これからもいろんな人たちにお世話になるんだと思います。

 

esportsは本当に素晴らしい文化だと思っています。

ブームではありません。これはもはや一つの文化です。

 

海外のesports大会へ赴くたびに思い知らされます。

どんな言葉を喋るかも関係ない、肌の色も、目の色も、人種も、なにもかも関係なく、ひとつのゲームがあり、それを共にプレイしている人間ならば共通の世界観を分かち合える。

こんなに素晴らしい文化って中々ないんじゃないでしょうか。

 

僕はesportsのそんなところに惹かれていますし、esportsは人々の生活をより良いものにするんだと本気で思っています。

 

僕らは本気でこれからもesports業界にコミットしていきます。

SPODIAとして、配信スタジオなどは現在の事務所に残しつつも、よりスピード感を持って事業を作っていくため、GameWithのある六本木ヒルズへ5月からメインの活動場所を移すことを決断しました。

 

7年前、おっちゃんプロデューサーから電話を受け取った階段の横にある、六本木ヒルズという建物で仕事をするようになるというこの人生は、どこか出来すぎている気がしませんか。

 

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